ヤスオ トシアキ   YASUO TOSHIAKI
  安尾 敏明
   所属   朝日大学  歯学部 口腔機能修復学講座 口腔生理学
   朝日大学  大学院 歯学研究科
   職種   講師
発表年月日 2024/09/12
発表テーマ 味蕾における味覚情報伝達とビタミンC摂取行動に関する研究
会議名 第58回日本味と匂学会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(招待・特別)
単独共同区分 単独
招待講演 招待講演
開催地名 岡山
開催期間 2024/09/11~2024/09/13
発表者・共同発表者 安尾 敏明
概要 マウス単一味細胞における味応答の活動電位記録解析では、甘味•苦味•うま味刺激により味細胞から情報伝達物質としてATPが活動電位依存性に放出される可能性やGABAシステムが味蕾内に存在する可能性を報告させていただきました。VC合成酵素欠如ラットの解析の結果、VC欠乏餌摂取により、VC水溶液を含む酸に対する摂取行動(リック率と嗜好率)が増加し、鼓索神経応答が低下し、茸状乳頭での酸味受容味細胞に発現する味覚関連分子等のmRNA発現量が低下し、食欲不振が惹起されることを明らかにしました。動物は必要な栄養素が不足すると、その嗜好性を変化させ、味覚を用いてその栄養素を検出し、周囲の環境から摂取すると考えられていますが、VC欠乏では、酸に対する忌避性を低下させ酸味を用いてVCを検出し摂取しているのかもしれません。体内でVCを合成できないヒトを含む哺乳動物の「酸味」は腐敗物を検出する役割だけでなく、果実等に多く含まれるVCを検出する役割も担っていることが考えられます。酸味はその摂取学習によって、ネズミやヒトに忌避行動と誘発性行動の両方を引き起こすことが知られています。私たちの祖先は進化の過程で、真猿類の系統の出現からメガネザルの系統の分岐までの時期にVC合成酵素を欠損したと推測されていますが、VCに対して忌避行動だけを示さなかったからVCの豊富な果実を摂取し生存できたのかもしれません。
また、私は、肥満症患者の空腸においてBMIが高い程、一部の味覚関連分子(PLCβ2やTRPM5)のmRNA発現量が低下する可能性を報告させていただきました。