イワタ シュウスケ   IWATA SHUSUKE
  岩田 周介
   所属   朝日大学  歯学部 口腔機能修復学講座 口腔生理学
   職種   助教
発表年月日 2023/09
発表テーマ カプサイシンはマウス味覚神経応答を糖特異的に増強する
会議名 第65回歯科基礎医学会学術大会
学会区分 全国学会
発表形式 ポスター
単独共同区分 共同
国名 日本
開催地名 東京
開催期間 2023/09
発表者・共同発表者 岩田周介、吉田竜介、髙橋慎平、安尾敏明、諏訪部武、硲哲崇、二ノ宮裕三
概要 香辛料は食のおいしさを際立たせる独特のフレーバーを醸成し、食味の構築に重要な役割を果たす。しかし、その味覚効果の実体は未だ不明である。唐辛子の辛味成分であるカプサイシン (CAP) は三叉神経末端に存在する痛み受容陽イオン非選択的イオンチャネルのTRPV1を刺激することは明らかになっているが、味覚への影響に関しては、ヒトで、全く影響はないとする報告から、苦味を感じる、甘味うま味を低下させるなど味覚修飾が生じたとするものや、げっ歯類の味細胞・味神経応答の解析においても、苦味甘味の低下、うま味の増強、塩味の増強や低下など、相反する結果も含め多種多様の報告がなされている。しかし、これらの報告の多くは、CAP受容体候補TRPV1の感受性低下(脱感作)を生じる30μM以上(-500μM)のCAPを用いており、多様な結果の背景には、味覚測定の再現性の問題も強く示唆される。そこで、本研究では、脱感作を生じる可能性の低い0.1~10μMCAPの味覚への影響を、マウス鼓索神経応答を指標に検索した。その結果、この濃度範囲では、鼓索神経に有意な活動変化を生じないことがわかった。次に、甘・塩・酸・苦・うま味溶液と、それらの3μM CAP混合液に対する応答を解析した。結果、0.5M 単糖類及び二糖類、0.1M NaClの応答が有意に増強され、人工甘味料や他の味物質に対する応答には変化がなかった。さらに、TRPV1阻害薬I-RTX舌処理により、糖、NaClに対する影響は消失した。軸索反射関連ペプチドであるアドレノメデュリン(ADM)は、糖輸送体を介し糖特異的にマウス鼓索神経応答を増強する(投稿中)。糖輸送体阻害薬フロリジン、及びADM受容体阻害薬AM(22-52)により、CAPによる糖応答の増強が消失した。これらの結果から、CAPがTRPV1を介して味覚に影響を生じると仮定すると、味細胞にTRPV1が発現し、その活性化による直接的な効果、あるいは三叉神経末端のTRPV1を介し軸索反射で分泌されたADMによる味細胞への間接的な影響などが予想される。