イワタ シュウスケ   IWATA SHUSUKE
  岩田 周介
   所属   朝日大学  歯学部 口腔機能修復学講座 口腔生理学
   職種   助教
発表年月日 2023/09
発表テーマ 酸に対する味覚嗜好性、リック率、鼓索神経応答及び味覚関連遺伝子にビタミンC欠乏が及ぼす影響
会議名 第65回歯科基礎医学会学術大会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(招待・特別)
単独共同区分 共同
発表者・共同発表者 安尾敏明、髙橋慎平、岩田周介、諏訪部武、硲哲崇
概要 動物は酸味を利用して、腐敗した食物を忌避したり、ビタミンやミネラルを含む食物
を選択すると考えられている。本研究では、アスコルビン酸(ビタミンC;VC)欠乏
時の酸に対する応答を調べるため、ヒト同様にVC合成能がないOsteogenic Disorder
Shionogi/Shi Jcl-od/odラットを用いて行動学的、神経科学的、解剖学的、分子生物
学的実験を実施した。48時間2瓶選択実験(3 mMクエン酸または10 mM VCと蒸留水)
の結果、VC欠乏時では、これら酸味溶液に対する嗜好率(=酸味溶液摂取量÷総摂取
量×100)が、VC充足時よりも高くなっていた。また、酸味溶液[VC、クエン酸、酢
酸、酒石酸、塩酸]に対するリック率(=各種溶液のリック数÷蒸留水のリック数×
100)は、VC欠乏前及びVC再摂取後と比べて、VC欠乏時は有意に高かった。次に、VC
欠乏ラットとVC充足ラットの各酸に対する末梢味覚器での電気生理学的応答を評価す
るために、鼓索神経応答解析を行った。その結果、VC、クエン酸、酢酸、酒石酸及び
塩酸に対する神経応答は、VC欠乏ラットでは、VC充足ラットに比べ、有意に低下して
いた。また、単位面積当たりの茸状乳頭味蕾数は、VC欠乏ラットとVC充足ラットとの
間に有意差はなかった。しかし、VC欠乏ラットの茸状乳頭味細胞における一部の味覚
関連分子(Gnat3, Trpm5, Tas1r1, Car4, Gad1)のmRNA発現レベルは、VC充足ラット
のものと比べて有意に低かった。
以上の結果から、VC欠乏により、酸に対する忌避行動は減少し、酸に対する鼓索神経
応答が低下することが示唆された。また、VC欠乏により、茸状乳頭味細胞において、
いくつかの味覚関連遺伝子はダウンレギュレートされるが、酸味受容体(OTOP1等)のm
RNA発現量は、VC欠乏による影響を受けない可能性も示した。